彼女が見るのは夕焼けに染まった戦場、神戸。
しかし彼女は前線にいる事はなかった。
体中に包帯が巻かれ、不機嫌そうにしている。
その包帯こそが原因である。
「…しくじりましたわ。あのお方の背を最後まで守りたかったですのに…」
ギリッと噛み締める音。
痛いぐらいに握られた拳。
それ程悔しかった。
とても、悔しかった。
「私の力は大切な人を護る為のもの…なのに護れずこの様だなんて…あまりにも無様ですの…」
珍しく怒っているような声色。
それは誰に対してではなく、自分に対してだろう。
…そして、そんな時に小耳に挟んだ話は…。
「………。ウソ」
信じたくはなかった。
絶対信じたくはなかった。
けれどもそれが現実で
それが真実
…誰にも変えられない事実…
「こんなにも…こんなにも無力な自分…能力者だなんて…名ばかりッ…!」
その言葉は誰にも聞かれないように呟かれ
誰にも悟られない内に消えて行く。
彼女にとって
一番辛い卒業の思い出となってしまったのかも知れない…