ヴァンハイト家の屋敷
その屋敷のリビングには重苦しい空気が流れていた
向かい合ったソファーには金髪の少年の姿と銀髪の男の姿
そしてその向かいには彼女、ティアの姿があった
「…どうして此方にいらっしゃいましたの?」
「新しい年は家族で過ごす。そういう仕来りだろ?」
「どうせ真矢様をまだお認めになっていないのでしょう?ですからこうして来たのでしょう?」
ティアの問いかけに二人はギクリと体を震わせた
「分かっています。どうせお兄様がお父様を言いくるめてこっちに来て、真矢様と離れさせようとしているんでしょう?」
「違う、誤解だって!」
「ではどうして重症の真矢様の看病をする時、引きとめましたの!?」
そう、彼女はつい先日怪我をした彼の手当てをしようとした所
父に止められ、ムカムカしていたのだ
そのムカツキを表に出している。珍しいぐらいに
「ティア、分かっておくれ。わし達はお前が心配で心配で…!」
「心配してくれるのは有り難い事です。それは感謝致します。それでも私は真矢様がいいんです。真矢様でないといけないんです!」
「………ティア。本気なんだな?」
「私は本気です。何れ彼の妻となり、子を授かりたいとも」
「…ヴァンハイトの後継ぎはどうするつもりだ?元々ヴァンハイト家は魔女の血筋で代々女性が当主となる」
「それは…」
「わしが引き継いでいるのは特別な許しを得ておるからだ。わしが死んだら誰が当主に?」
「お兄様ではダメなのでしょうか?」
「俺は魔女らしい力は受け継いでないし」
それもそのはずだ
今やヴァンハイトの生き残りはティア一人だけ
今の当主であるこの父が死ねば
自動的に引き継ぐ形になってしまう
「真矢様といられるのなら家でも何でも受け継ぎます。ですからお父様、どうか真矢様のこと…」
「……分かった、しかし条件がある」
「条件、ですか?」
「一つ。ティアを泣かせないと約束すること。二つ。孫が出来たらすぐ見せに来る事。三つ。わしのティアにあまりべったりしないことじゃ!」
………
暫しの沈黙の後、ティアがテーブルをバンッと叩いた
「お父様、それは過保護過ぎですわ!それに気が早すぎます!」
「わしの大事で可愛い娘をやるからには当然であってだな!」
「大体、婚約のお許しだってまだいただけてません!」
「条件を飲めばいい、婿になれといってるわけではないだけマシだろう?」
こうして彼女達の言い争いは後1時間半も続いたという――
結局話は平行線のままでしたとさ
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