そう言えばもうすぐ卒業の季節ですわね
私も卒業、という事になりますわ
卒業すれば道は二つ
一つは能力者を引退する
もう一つは能力者として戦い続ける
…私が選択した道は後者ですわ
愛する人はまだ戦いつづけねばならないというのに
私だけ平穏に過ごすという事は出来ません
寧ろ耐えがたい苦痛です
ですから私は戦います
専業主婦になろうとも、ですわ
戦うしかヴァンハイト家存続の道もないという意味もあります
この力が
誰かの役に立つのでしたらば、私は喜んで……
彼女が見るのは夕焼けに染まった戦場、神戸。
しかし彼女は前線にいる事はなかった。
体中に包帯が巻かれ、不機嫌そうにしている。
その包帯こそが原因である。
「…しくじりましたわ。あのお方の背を最後まで守りたかったですのに…」
ギリッと噛み締める音。
痛いぐらいに握られた拳。
それ程悔しかった。
とても、悔しかった。
「私の力は大切な人を護る為のもの…なのに護れずこの様だなんて…あまりにも無様ですの…」
珍しく怒っているような声色。
それは誰に対してではなく、自分に対してだろう。
…そして、そんな時に小耳に挟んだ話は…。
「………。ウソ」
信じたくはなかった。
絶対信じたくはなかった。
けれどもそれが現実で
それが真実
…誰にも変えられない事実…
「こんなにも…こんなにも無力な自分…能力者だなんて…名ばかりッ…!」
その言葉は誰にも聞かれないように呟かれ
誰にも悟られない内に消えて行く。
彼女にとって
一番辛い卒業の思い出となってしまったのかも知れない…